絵画販売価格の決定
絵画販売価格の決定者
絵画は様々な価格をつけられて販売をされているが、作品の価値を決定するのは、作者の能力は別として、美術商と収集家である。しかし、それだけではなく、商品の流通に直接携わらず絵画販売を行っていない批評家、ジャーナリスト、学者、識者、観衆の意見が、絶えず価値判断に反映し、それがかなりの作用をする。両者の見解は、対立することもあれば、一致することもあり、また後者のオブザーバーの間でも、各自の立場によって見解の相違がしばしば顕著に表れる。
それらすべての観点が流動的に集約されて、一定の価値決定が生まれる。ところが実際には決定の主力をなすのは絵画販売を行っている美術商であり、多くの場合かれ独自の判断で価値決定がなされている。
どうしてそうなるかというと、さきに述べた美術価値の不安定に対して、相当なリスクを持って望むのが美術商だからであり、かれらは最初、未知の物、評価の定まらない物を、自力で相当の期間支えなければならない。
それにやがて、ある数の客がつくようになれば、おのずから安定するが、絵画購入者の多くは自身の判断を持たず、画廊を信頼し、そのすすめに従って作品を購入することが多いので、たとえ安定したとしても、長期間にわたって自分の売却した品物に対する責任を果たす義務があって、リスクは簡単に消えることがない。事実、顧客が作品を換金する必要がある際には、時価の変動があっても売価を保証することが不問律になっており、いったん自分が販売した作品に対する責任のとり方は具体的でなければならない。
美術作品は、食物などのように売却した後に姿を消してしまう物ではなく、また消費財のように言って期間の後には使用に耐えられなくなる物でもない。しかし、絵画の販売はそもそも、売と買とでは別ではないかという意見も出てこようが、少なくとも顧客に対する限りそれを割り切ることは難しく、売価の保証は絶対的に必要とされている。
これらの点から絵画を購入する際には以下の点に留意をする必要がある。
1.画廊で購入をする場合はその金額や客観的な価値ではなく美術商の主観で決められている。
2.作品を購入した際に返品保証がない画廊、ギャラリーで購入をすることは絶対に避けるべきである。
3.画廊に一見さんと思われたら高値で買わされる。絵画を購入する場合は顔見知りの画廊で購入すること。