シャガールの絵画の魅力
今なお世界中の人々の心を惹きつける芸術家、マルク・シャガール。日本でも「シャガール展」という展覧会が、各地で今も盛んに開催されています。
絵画や版画、彫刻の独特な色彩感覚は、見る人を惹き付け、強い個性と創造性を感じさせます。シャガールは生涯にわたり妻のベラを一途に敬愛していたこと、そしてベラへの愛や結婚をテーマとした作品を多く制作していることから、「愛の画家」とも呼ばれています。
シャガールはロシアのウィテブスクに生まれ、ペテルブルクの美術学校に学びました。その幻想的な絵画は、ユダヤ教の象徴やロシア民衆版画などから来るものだといわれています。 初期には褐色系の色彩を基調とし、ゴーガンやナビ派の影響が見られる作品を描いていました。この頃の作品は、後の作品だけを知っている人からすると、シャガールの作品だと分からないかもしれません。
シャガールは、絵画における詩人でした。色彩の魔術師と呼ばれ、彼の描く芸術は「見えないものを見えるようにするシャガールの魔法」といわれています。 シャガールの絵を見ていると、心地良いノスタルジックな感情を抱くでしょう。しかしシャガールの絵は、牧歌的でありながら華やかな、ふんわりとした色彩の絵だけではありません。孤独や革命を主題とした、暗い色調の絵もあるのです。
熱心なユダヤ教徒の家庭に生まれたという自分の出生や、フランス・ロシア・アメリカと住まいを転々とする波乱に満ちた生涯などが、シャガールの芸術活動に大きく関わっています。そのことは、絵の主題やモチーフからも見て取れるでしょう。 シャガールの絵画におけるイメージの全体性と連想の多様性の中には、見る者の魂の放浪を可能とするような力を感じさせます。