サルバドールダリの 「パラノイク・ヴィレッジ」は、戦いに敗れた跡のように石門が崩れ落ちたままのうらびれた村の様子を描いた作品です。崩れ落ちた石門だけを見ると悲哀に満ちた印象を受けますが、門の番人をしている羽を付けた悪魔は眠りこけており、門の向こう側には赤いドレスを着て縄跳びをする少女の様子や、幾人かの人影が見えます。崩れた門とは対照的に、村はのどかな平穏を取り戻しているようです。細かな描写だけではなく、このアート作品は構図と色使いの美しさも際立っています。突き抜けるような澄んだ青空に薄いベージュの建物、奥に静かに佇む教会や遠くの山々がキレイです。点在する人影や手前の悪魔のような番人もアクセントとして加わり、とても美しい光景が描かれているといえるでしょう。