サルバドールの名画が生まれた伝統と精神
サルバドール・ダリに見る伝統と精神性
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サルバドール・フェリーペ・ハシント・ダリ・イ・ドメネクは1904年5月11日に生まれ、1989年1月23日に亡くなった20世紀を代表する画家の一人です。 彼の少年期は早熟で反抗的だったと言われています。 彼には、彼が生まれる前に夭逝した同名の兄がいました。 両親の中でその“同名の兄”は美化された存在であり、弟は兄の“代わり”として扱われたと言われています。 こうした環境の中でサルバドールは両親への反抗心から、奇行を演じ続けたのです。 ですが、彼の父親は彼にとって美術的な影響も与えました。 父親が買い与えた画集は、サルバドールの写実主義的な傾向を育んだのです。 |
ダリの絵画を生んだシュルレアリスム
さて、サルバドール・ダリを語る上で欠かせないのが、シュルレアリスムという表現思想です。 シュルレアリスムは詩人トリスタン・ツァラ等によって始められた“ダダ”という芸術運動から生まれています。 シュルレアリスムは勢いを失っていた“ダダ”に代わり、より積極的に潜在意識を意識の世界に解放することにより、今までに表現できなかった世界を表現することを目的としていました。 ダリの絵画を見れば、その特異な表現はすぐに目に付くことでしょう。 その絵の中に現れた世界は、非現実的でありながらも、細部がリアルに描かれており、“超現実”という言葉がぴったりと当てはまります。 こうした表現は、精神性の追求と同時に写実主義的な、絵画の伝統的手法に基づいた卓越した技量があってこそ実現されます。 代表作の一つである“悼ましい遊戯”には、その特徴的な表現が強く出ています。 画面左に顔を手で覆った彫像が有り、彫像のスケールに比してその右腕が大きく描かれています。 この右手は細部にわたってリアルに描かれていますが、それはやや誇張されたリアルさとなっています。 右手の先にはサルバドール自身と思われる頭部が画面右から伸びてきています。 その口には彼が恐怖の対象としているバッタが貼り付いています。 こうした自分自身を絵の中のイメージとして取り入れることは、ダリの絵画に多く見られる傾向です。 |
最高の宣伝家サルバドールダリ
彼は最高の自己宣伝家と言われており、そうした傾向は画面の中にも現れています。 その他性的な暗示作用を思わせる様々なイメージが画面には散りばめられています。 こうした性的表現や虫への恐怖、またグニャグニャとした物体などは彼の絵画表現に多くに見られる傾向です。 ダリは数多くの作品を残しており、現代美術に大きな足跡を残しています。 また、こうした作品のいくつかは日本国内の美術館でも見ることが出来ます。 |