有名な絵画の一つでもあるミレーの落穂拾いは、美術の教科書に載っている作品です。パリの郊外にある農場で3人の女性が落穂を拾っている姿は、グレーがかった背景色とともにどこか、秋の物悲しさを感じさせます。この3人の女性は、この農場で働く使用人ではなく、食べるのにも困った寡婦達が、収穫後に落ちた稲穂を拾って食料とするのです。この当時は、キリスト教の信仰が強く残っており、収穫後に残った落穂は拾ってはいけないと聖書に書かれています。落穂は貧しいものに分け与えるという教えがこの時代には暗黙のルールとしてあったのです。美しい秋の農場の景色と、物悲しい姿の寡婦達が一つの情景となって、豊かな時代を生きる私たちに何か訴えてくるような気がしませんか。