絵画販売をしているマルクシャガールの「King David and the Lyre」は、日本語でデビット王とたて琴という意味です。一見風景画のようにも捉えることができますが、よく観察してみると、常識の枠を飛び出した現実と幻想の異空間が織り交ざっているのがわかります。上質な赤のマントを身にまとい、王冠を頭にかぶる王様が手に抱いているのは、ギリシャ時代から伝わる楽器です。優雅に爪弾く王の姿を優しい月明かりが照らしています。暗い色彩は重く冷たいイメージを連想させてしまいますが、シャガールのKing David and the Lyreは立体さを生み出す技法がところどころに見受けられ、どこか洗礼された美しさを感じずにはいられません。色彩豊かな中にも、切なさや不思議な光景が詰まった作品です。