マルクシャガールの「クロエの誘拐」は、幻想的な色合いで息をのむ光景が広がった作品です。タイトルから読み取れるイメージとは違い、色調はシャガールらしい色鮮やかなタッチで描かれており、幻想的な美しさを感じさせます。「誘拐」という部分を表すために独特の手法で人物を組み立て構成し、そこに豊な色彩をプラスすることで、日常の枠を超えた世界観を感じたという人も多いでしょう。それこそがシャガールの絵画の素晴らしいところで、見る人の心に心理的イメージがどんどん膨らんでいきます。画面いっぱいに描き出された人々を象徴的な表現で描きだし、奇抜さを連想させる強烈な色彩表現が秀抜に融合することで独自の世界を示しています。非常に芸術性が高い作品といえるでしょう。